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『本陣殺人事件』読書会レポ―ト

雪の間の

四月の春めいた午後、都のかなり北東の街札幌のとある地下の喫茶店に、ぞくぞくと男女が集まり始めた。
横溝正史「本陣殺人事件」の読書会である。

はじめまして。
札幌読書会のキクチカです。
私は世話人ではありません。
今回は金田一耕助ファンとして、無理を言って特別にこれを書かせていただきました。
「獄門島」を読んで以来、「日本にこんなにかっこいい探偵がいたなんて!」と血沸き肉踊り狂喜乱舞したファンの私、どんなにかこの読書会を楽しみにしていたことでしょう!
これはレポートではありません。
いちじるしく、公正さを欠くであろう駄文です。
読んですぐ忘れていただければ、幸いです。

25名の男女は、全身白服の世話人Hによって二ヶ所の部屋に導かれた。
世話人Hの服装を見て、初めて参加された方々は「やばいかも」「導かれるかも」と思ったのではないだろうか。
だって世話人Hは膝下まである真っ白なシャツに、白いズボンである。
まるで宗教団体の幹部風である。
本人は「作品にあわせて白装束のコスプレしたの」との事だが、「本陣殺人事件」は結婚式の話であり、葬式の話ではない。
そもそも文中の花嫁は、白無垢を着ていないような

白装束の話から離れよう。
私は雪の間。
司会は世話人M、別名みほりん艦長である。
私は嬉しすぎて誰が何を言ったか、事細かに覚えていない。
議論の核になった(自分的に)ところだけ、抜粋しよう。

このトリックはありえるのか

「美しい密室殺人」と言われる、本陣のはなれでの殺人。
紅殻塗りの建具、倒れかかる屏風、かき乱れる琴の音、竹林のざわめき、水車のきしみ。
この舞台設定の美しさ、はかなさ。
しかし、このトリックは?
成立しない、との結論でした。
ほぼ全員一致。
「真剣は重い」多くは言えないが、重過ぎると難しい。
「欄間のすきまは狭い」多くは言えないが、狭いと難しい。
「三本指の男の登場が、都合よすぎ」多くは・・・
多くは言えないのが残念だが、金田一耕助は物語の中の実験で、見事にトリックを再現している。
その場面の設定も、日本画を見るようにきれいである。
するすると宙を移動する◯◯。
庭園にぴんと張りつめた◯◯。
竹林の中で巻き取られていく◯。
さて次に行こう。

もう一つの論戦、この動機はありえるのか

ここもネタがバレてしまうデリケートなところなので、ささっと行くが、これほど手が込んだ殺人の動機は、ちょっとありえないと思う人も多く、論戦は熱くなるはずだが・・・
一人のメンバーが発言した。
「カスですよ、この殺人者はカス。ただの見栄っ張りのカス」
ばっさりである。
雪の間の室温は5℃くらい下がった。
そうだよ、カス。
我々は、カスが行った殺人の小説を読んでいたのではないだろうか・・・
動機だめ、動機くだらない、ちっちゃな理由で人を殺すちっちゃい奴・・・
数々の、発言。
全く共感されない動機に、本陣はゴミカスになってしまうのか、と思った時、東京から参加のFさんが発言した。
「一円のお金だって殺人の動機になりえる」
おお!なんと美しい言葉であろうか!
そして札幌読書会の別名人間Google氏が発言。
「この殺人者は怒りでいっぱいです。動機は憎しみでしょう」
人間Google氏は,知らない事はないのではというくらい物知りのであるが、若い時分横溝作品に傾倒して、岡山でご当地巡りまでしたという、誉高い横溝ファンなのであった。
彼の言葉は(私にとっては)神の声であった。

読書会も第二部に時が移り、琴の間と雪の間で何人か人が入れ替わった。
琴の間は「初横溝の人が多いので魅力を語って下さる方来てくれませんか」」と言う世話人Hの希望により、人間Google氏その他何人かが琴の間へ出陣していく。
頼もしい背中だ。
金田一耕助の魅力については、書き出すと恐ろしく主観的になるから、ここでは控えておこう。
ただ琴の間から来た「金田一耕助の魅力がわからない」と言う会員に、果敢に挑んだのは、意外にもパフェ娘であった。
パフェ娘とは、全国の読書会に参加しては、パフェの写真をアップして、見ている人々を悶絶させる伝説の読書会会員である。
金田一のどこがいいのか、と繰り出されるアタックを「友達にしたいタイプですよー」と、華麗なレシーブで返すパフェ娘なのであった。

さて角川映画の功罪について

横溝正史と言えば、イコール犬神家の一族、イコール湖面から突き出た二本の足、というイメージの方が多いのではないだろうか。
読書会でも「キワモノ系の作品だと思っていた」「ホラーではないか」「血みどろの感じ」「表紙も怖い」という発言が多かった。
表紙はともあれ、陰惨、血族のたたり、恨み、うーんすべて間違ってはいないが、このイメージはあの角川映画から発せられたのではないか、との発言。
まさにまさに。
あのお化け屋敷のような宣伝で、横溝正史は陰惨ホラーの小説家である、と当時の自分もそう信じ込んでいたのである。
角川文庫の杉本一文氏の、表紙も怖い。
「獄門島」は着物姿の女性が、目をくぁっと開いたまま木から逆さ吊りになっている。
「本陣殺人事件」の杉本氏の表紙は、瞳の大きな少女が、黒猫の帽子を被ったように見える挿絵である。
猫好きなあなたなら「かわいい!」と、思うわよ♪

「獄門島」「犬神家の一族」などは日本を代表するミステリーとして、常にトップクラスに組している。
講談調の流れるような文体も読みやすく、日本の風土や文化やそこにとらわれてしまった旧家の人々などを、温かな視線から書いてある。
趣味の欄に「読書」と書くすべての方々、小説を書くすべての方々、小説にかかわる仕事をしているすべての方々に読んでもらいたい作品である。
今回の読書会は、横溝ファンももちろんいたが、横溝作品を初めて読んだ、という方も何人もいらした。
大きな喜びである。

きくちか



きくちかさん、愛溢れるレポートありがとう!!
間違いだらけの白ずくめ:世話人Hでございます。
ちなみに雪の間で紛糾していた「動機」については、琴の間でも話題になりましたので少し披露させて下さい。
ほとんどの方が「動機としてはありかもしれないけど理解できるとは言えない」といった感じだったでしょうか。
もちろん「ありえない。全然ダメ!」という人もいました。
みんなモヤモヤしていたのは間違いないところです。
しかし琴の間にも賢者がおりまして、この動機が十分に成立する時代であったということを他の書物からのエピソードをあげて説明して下さいました。
それはもうすごい説得力。全員の腑に落ちる「すとーん」という音が聞こえたような気がしました。
こういう瞬間、読書会の醍醐味を感じます。

私、世話人Hにとっては「白で黒歴史を作った読書会」になってしまいましたが、皆様楽しんでいただけたようで嬉しいです。
”翻訳ミステリー読書会”ですがこのように国内作品も精力的に取り上げています。
次回は8月。お題は夢野久作『ドグラ・マグラ』です。
乞うご期待!
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